東京ディズニーランド、東京ディズニーシーが7/1から一部縮小した状態でパークの運営を再開するにあたってのチケット販売が行われた昨日。繋がらない予約サイトに疲弊したDヲタたちに、さらなる追い討ちをかけたのは「スプラッシュマウンテンのリニューアル」に関するお知らせでした。
私が最初にこの話を見たのはTwitterで、そのツイートにはコンセプトアートとリニューアル*1することについて論じられたということしか分からず、アート内のボートが2人乗りであることから、フロリダのウォルト・ディズニー・ワールド(以下:WDW)のマジックキングダムにあるスプラッシュマウンテンに手が加えられるのだろう、と思っていました。
Exclusive: Walt Disney Imagineering’s Bob Weis discusses reimagining Splash Mountain for Tiana and her friends: https://t.co/pX8bnWOWAs pic.twitter.com/GYkJK2FnFR
— Disney D23 (@DisneyD23) 2020年6月25日
きっと、ずっと前から決まっていたことなんだろうけど、アメリカで差別問題に関する抗議活動が激化している真っ只中に、この内容が発表されると色々ありそうだな…などと考えていたところ、次に回ってきたツイートに更なる衝撃を受けます。
We're thrilled to share Splash Mountain at @Disneyland & @WaltDisneyWorld will be completely reimagined with a new story inspired by an all-time favorite Disney Animation film, “The Princess & The Frog.” Learn about what Imagineers have in development: https://t.co/ZDa3TiFlZr pic.twitter.com/sK4NOpR8FE
— Disney Animation (@DisneyAnimation) 2020年6月25日
えっ?WDWだけじゃなく、カリフォルニアのディズニーランド(以下:DL)にあるスプラッシュもなの?ちょっとこれは黙っていられないぞ?となり、2時すぎまでヒートアップして眠れなくなってしまいました。
Reimaginingについて
WDWでもDLでも、そして私たちに最も身近な東京ディズニーリゾート(以下:TDR)でも、これまでに数々のアトラクションがReimaginingとして、既存のアトラクションのハードを活かしながら、新たなアトラクションとして生まれ変わってきました。
TDSではポートディスカバリーの「ストームライダー」が「シーライダー」に、TDLではファンタジーランドの「イッツ・ア・スモールワールド」がディズニーキャラクターを追加し、外観や内装を大幅に変えたことが記憶に新しいReimaginingです。
もう少し前に遡るとトゥモローランドの「ミクロ・アドベンチャー!」が「スティッチ・エンカウンター」に、アドベンチャーランドの「魅惑のチキルーム ゲット・ザ・フィーバー」が「魅惑のチキルーム アロハ・エ・コモマイ」になったのも、当時はそのような呼ばれ方ではなかったものの、Reimaginingの一つになるかと思います。
僕らのシンド、というDヲタたちからの呼び名でおなじみの「シンドバッド・ストーリーブック・ヴォヤッジ」も、かつては「シンドバッド・セブンヴォヤッジ」だったりしているので、既存のアトラクションが新たに生まれ変わることは世界のDisney Parksにおいて、珍しいことではありません。
TDRの場合はシーライダーやアロハ・エ・コモマイが当てはまりますが、特に近年は「パークオリジナル」のストーリーを持ったアトラクションが、アニメーション作品やマーベル作品等の要素を加えたものに生まれ変わるというパターンが多く見られてきました。
WDWのエプコットにおける、ノルウェー館の「Maelstrom」という北欧神話等がテーマのものが「Frozen Ever After」という『アナと雪の女王』の世界を辿るものに。ディズニー・カリフォルニア・アドベンチャーでは「タワー・オブ・テラー」*2が「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:ミッション・ブレイクアウト!」に。香港ディズニーランドでは「バズライトイヤーのアストロブラスター」が「アントマン&ワスプ:ナノ・バトル!」に。
このように既存のアトラクションを潰してゼロから新しいものを作るのではなく、その場にあったリソースを活かして新たなものを生み出すのは、近年の世界のディズニーリゾートでは珍しいことではありません。
ですが、タイミングがタイミングということもあって、まさかのYahoo!ニュースですよ。まぁ、以前から色々な声が上がっていたとは言われていますけど「○○○があったから△△△にした」っていう単純なことではないはずなんですよね。そんな急に持ち上がったとかではなく、以前から温められていたはずで。
ただ、リニューアルしていつ頃のオープンになるのかという具体的なことが書かれていないことから*3、おそらく予定していたよりも早く、この計画を発表することになったのではないかと思います。出す時期が遅くなれば遅くなるほど、現在のアメリカの情勢を受けての判断みたいになってしまうでしょうからね。
スプラッシュマウンテンとプリキスとの相性について
今回の件が大きなものになっているのは、スプラッシュマウンテンの題材であるディズニーの長編映画『南部の唄』に対して、様々な立場から意見を投げかけている方たちがいるからである、みたいな感じで先ほど紹介された記事には書かれています。もちろん、そういった話も実際にはあるのかもしれませんが、確かに『プリンセスと魔法のキス』をテーマにしたアトラクションを、今あるリソースを元にして生み出すのであれば、スプラッシュマウンテンほど適した素材は他にありません。
アトラクション内部の要素と『プリンセスと魔法のキス』のストーリーを思い出してみると、このエリアはあのシーンを描くのにちょうど良さそうだな?という要素がいくつか思い当たります。
- 水上を丸太のボートに乗って進むというライドシステム
- 低い天井からカーテンのように茂っている木々
- 暗闇にブラックライトの演出で蜂が飛び回る演出
- エンディングにおいて蒸気船で歌い踊るオーディオアニマトロニクス
最後にスプラッシュに乗ったのがいつなのか覚えていない私ですら、あれ?言われてみればプリキスとの相性、めちゃくちゃいいな?と具体的に思い浮かんでしまうぐらいなので、今あるものから新しいものを生み出すことを課題とされたイマジニアたちの頭の中には、もっと多くの具体的なアイデアが浮かび上がっていることでしょう。
私が考える今回のReimaginingの問題点
「ディズニープリンセス作品」として括られる作品の中で、私自身が最も好きな作品が『プリンセスと魔法のキス』なので、正直なところ最初に今回の案件を知った時には「ついにプリキスのアトラクションが!スプラッシュは世界で3か所にあるし、1か所くらいは仕方ないね~!」ぐらいのノリでした。
DCLで今作をテーマにしたレストランが出来たことは、ストーリーの流れからしてもいつか実現してほしいことの一つだったし、パークでは会うことのできない作品本編にちなんだコスチュームを纏ったティアナと対面できた時は、非常に感動したものです。
なので、プリキスのアトラクションが誕生すること自体はとっても嬉しい!では、何が気になるのかと聞かれたら、それは「どうしてDLもWDWも一緒にReimaginingしてしまうのか」ということ。それに尽きます。
DLのスプラッシュマウンテンは、ニューオーリンズスクエアという他のパークにはないエリアの隣にある、クリッターカントリーというエリアの入口部分に位置しています。このクリッターカントリーには他にくまのプーさんのライドアトラクション*4と、ハングリーベアレストランがあります。ちなみにプーのアトラクションがあった場所には以前、カントリーベア・シアターがありました。
隣接するエリアの雰囲気を考えると『プリンセスと魔法のキス』の世界観がよりなじむと思われるのはDLのほうです。何故なら、並んでいるエリアのモデルであるニューオーリンズはプリキスの舞台となっている街、そのものだから。そのため、マルディグラの季節にはティアナ、ルイス、ナヴィーンが登場するミニショーが開催されていたこともあります。今あるものがなくなってしまう寂しさはあれど、DLに関して言えば新たに生まれ変わったアトラクションと、それによって変化するエリアの様子を見てみたいというのが素直な気持ちです。
A look at Disneyland's New Orleans Bayou Bash! entertainment offerings
では一方で、WDWのスプラッシュマウンテンはどうなのか。マジックキングダムではフロンティアランドという、西部開拓時代をテーマにしたエリアにあり、アトラクションのエントランスはあのビッグサンダーマウンテンと目と鼻の先にあります。余談ですが、ウエスタンランドという名称は東京だけのもので、カリフォルニアでもパリでも西部開拓時代をテーマにしたエリアはフロンティアランドという名称になっています。
過去に私がWDWを訪れたのはいずれも1月だったため、そもそもリハブだったor濡れて寒い思いをしたくないかのどちらかの理由から、未だにフロリダ版に乗ることはできていません。が、同じエリアにあるアトラクションが先述したビッグサンダーの他、カンベアやシューティングギャラリーと、人間により築かれた文化により生まれた文明が多く登場するため、動物たちだけが暮らす世界の物語を描いたアトラクションがあるのは、どこかアンバランスなようにも思えます。*5
上海ディズニーランドのオープンと共に、世界を一周する展開のソアリンが誕生した後、エンディングのシーンが各パークのバージョンに差し替えられた内容で、DCAとエプコットのソアリンも内容を一新しました。この時にも今回の件と全く同じで「何故それぞれがエリアやパークのテーマに沿った内容で別々のものを残さないのだろう」というのを強く感じましたし、今でもDCAはOver Califoriniaをスタンダードにしてほしいと思っています。
Soarin' Over California (Source Audio / Ultra Clear Video)
DCAというパーク自体が、Disney California Adventureという名前でありながらオープン当初から徐々にエリア改修を行い、カーズランドやピクサーピアなどのキャラクター要素を投入することによって少しずつ持ち直してきているところがあるので、本来のテーマではなく新たなものを…という意向なのかもしれません。それでも毎年「期間限定で」カリフォルニアバージョンのソアリンが戻ってくると、そのたびに現地の俺たちが祭りになっているのをここ数年見ているので、東西パークでのアトラクション共通化には「何だかなぁ」と感じることが非常に多いのです。
TDRへ導入される可能性について
すでにワイドショーでも今回の改装が考えられている件について取り上げたり、TDLのスプラッシュマウンテンも同様になるのかという話をオリエンタルランドに問い合わせたりした媒体がいるようですが、何だか根本的なDisney Parksの傾向を全く知らずに、今回の差別に対する抗議運動が根本的な原因で、みたいな伝え方をしているのが嫌な感じだなぁという気持ちで受け止めています。
私自身の最推しプリンセス作品だからというのもありますが、Reimaginingの対象として『プリンセスと魔法のキス』が選ばれたのは、キャラクターの肌の色や人種がどうこうとかではなく、スプラッシュマウンテンというアトラクションをベースにして、ディズニー作品の世界観を現実世界に引き寄せることを想定した時に、何よりもふさわしいとされたのが、この作品だったのではないかと私は考えています。
今回の件はTDLでも人気の高いアトラクションであり、現在のアメリカの情勢があるからこそ、これだけの注目が集まり賛否もあるのだろうと思います。ですが、まずは『プリンセスと魔法のキス』が現存するスプラッシュマウンテンのハードと、いかに相性が良い作品なのかを知ってから、色々な声を上げてほしいんですけど?と、プリキスファンとしては思うわけです。釣りっぽいタイトルで申し訳ないけど、とにかくまだ見たことない人はプリキスを見てくれよな!